エクセル雑感
【ITとは何か】Excel・VBAを学ぶ前に知っておきたい「4つの本質」

ExcelマクロVBAとエクセル関数についての私的雑感
公開日:2026-06-24 最終更新日:2026-06-24

【ITとは何か】Excel・VBAを学ぶ前に知っておきたい「4つの本質」


「IT業界に興味がある」
「プログラミングを学びたい」
「VBAやPythonを勉強している」


そんなあなたに、まず伝えたいことがあります。
ITとは、特定のプログラミング言語やツールのことではありません。
AIが進化し続け、プログラミング言語や開発手法が変わり、クラウドや新たな技術基盤が登場しようとも、現場の最前線で本当に求められる「本質」はほとんど変わっていません。

そして、その本質は実は、あなたが普段使っているExcelの中にも、その多くを見ることができます。
ExcelやVBAを学ぶことは、単に表計算や自動化のテクニックを覚えることではありません。ITの世界で一生通用する「思想」を身につけることでもあるのです。
今回は、IT業界を目指す人が進むべき道を照らす「4つの羅針盤(本質)」を、現場のリアルな情景と共に紹介します。

【IT業界で生き抜くための4つの指針】

1. 情報処理とは「情報整理術」である - 情報のカオスに立ち向かう覚悟
2. ITとは「課題解決の手段」である - 顧客と社会に向き合う誠実さ
3. 優れた設計は「単純」だが「簡単」ではない - 安易な妥協を許さない職人の矜持
4. 本質を理解した者だけが変化を乗りこなせる - 変化に振り回されないための本質理解


1. 情報処理とは「情報整理術」である

<< 情報のカオスに立ち向かう覚悟 >>

ITという言葉を聞くと、多くの人は華やかなプログラミングを思い浮かべます。
しかし、ITの根幹にある「情報処理」の本質はもっと泥臭く、シンプルなものです。
その正体は、徹底的な「情報の整理整頓」にほかなりません。

例えば、Excelで複雑な条件分岐を作る場面を考えてみましょう。
初心者は、「IF関数の中に、さらにIF関数を何度も重ねる(ネストする)」という力技に頼りがちです。条件が増えるたびに数式は長くなり、画面からはみ出すほどの超大作になります。
書いた本人ですら数日後には解読できなくなり、条件が一つ変わるだけで簡単に壊れてしまう・・・
これこそが「情報のカオス(混沌)」に敗北した状態です。

一方で、情報整理術を身につけたプロのアプローチは違います。
まず、複雑な条件や分類ルールを「マスタ表」として別の場所にきれいに整理整頓します。
そして、数式はXLOOKUP関数を使ってその表を参照するだけの、シンプルで短い1行に収めます。
結果として、
  • 数式は短い
  • 修正が容易
  • 他人にも分かる
という美しい状態が生まれます。
ここでの本質は、検索のテクニックではなく、「条件をマスタ(表)として綺麗に分離する」という整理の思想です。
現場に配属されてあなたが最初に目にするのは、洗練されたシステムではなく、以下のような「カオス」です。
  • 人によって解釈がバラバラな、曖昧なビジネスルール
  • あちこちに散らばった、誰も全貌を把握していないデータ
  • 「とりあえず、いい感じにしてほしい」という顧客のざっくりとした要望
これらを「IF関数のネスト」のような力技で無理やり通すのではなく、情報を整理し、美しく構造化して誰でも扱える形に変えること。
それこそが情報処理であり、ITの出発点です。
情報の濁流に投げ込まれたとき、パニックにならず「さあ、きれいに片付けてやろう」と腕をまくる覚悟を持ってください。
情報を整理できない人に、良いシステムは作れません。


2. ITとは「課題解決の手段」である

<< 顧客と社会に向き合う誠実さ >>

新しい技術を学び始めると、AIツールや洗練されたプログラミング言語、流行りのフレームワークなど、「技術を使うこと自体」が目的になりがちです。
しかし、ITは目的ではありません。
あくまで「課題を解決するための手段」です。

ここでもExcelを例に挙げましょう。
上司や顧客から「大量のデータから特定の条件の人を抽出してほしい」と頼まれたとき、技術を覚えたての若手は、つい嬉々として「複雑なマクロ(VBA)」や「Pythonのコード」を書き始めたりします。
しかし、そんなことをしなくても、Excelの標準機能である「フィルタ機能」や「並べ替え」を使えば、瞬時に解決することが多々あります。
もし数分で終わる作業を、自動化のために何日もかけて開発したなら、それは技術的には面白くても、ビジネス(業務改善)としては失敗と言わざるを得ません。

どれだけ美しいコードであっても、それが目の前の課題解決につながらなければ、ビジネス上の価値は生まれないのです。
ITの本当の価値は、「何を作るか」ではなく、「何を解決するか」で決まります。
優れたエンジニアほど、技術より先に課題を見ます。

そして時には、
「システムを開発するのをやめて、現場の業務フローを1行見直しましょう。」
という、システムを作らないという提案すら行います。

技術を愛することは大切です。しかし、技術の自己満足に溺れてはいけません。
目の前の顧客や社会の課題にどこまで誠実に向き合えるか。
それがプロとアマチュアの境界線です。


3. 優れた設計は「単純」だが「簡単」ではない

<< 安易な妥協を許さない職人の矜持 >>

「誰が見ても一瞬で理解できる、シンプルで美しい設計」
これを作る作業こそが、この世で最も難しく、最も価値のある仕事です。

初心者が作ったExcelファイルには、長大な数式、複雑な参照、あちこちに散らばった設定がよく見られます。
1つのセルの中に `&` や複数の関数を限界まで詰め込んだ「200文字もある数式」は、その場で作るだけなら「簡単(Easy)」です。
しかし、後からそれを見た他人は、あまりの複雑さに絶望することになります。

一方で、本当に優れた設計のExcelファイルは、驚くほど「単純(Simple)」です。
例えば、
  • 入力シート(データを集める場所)
  • マスタシート(ルールを定義する場所)
  • 集計シート(計算を行う場所)
  • 出力シート(結果を見せる場所)
というように、シートごとに役割が明確に分離されています。
一つひとつのセルの数式も短く、誰が読んでも意味を追うことができます。

しかし、このシンプルな状態にたどり着くのは決して「簡単」ではありません。
締め切りに追われ、仕様変更が重なると、人間はつい楽な道に逃げたくなります。
「とりあえず、ここにIF文を1行付け足せば動くからいいや」
という安易な妥協の積み重ねが、誰も全体を理解できないスパゲティシステムを生み出します。

複雑なものを複雑なまま作るのは簡単です。
本当に難しいのは、複雑なものを極限まで削ぎ落とし、単純にすること。
優れた設計者は、複雑さを利用者や保守担当者に押し付けません。
自分が泥臭く苦労してでも、全体を分かりやすく整理します。
動くだけのシステムをでっち上げる誘惑に負けない、職人としてのプライド(矜持)を胸に秘めてください。


4. 本質を理解した者だけが変化を乗りこなせる

<< 変化に振り回されないための本質理解 >>

「IT業界は変化が激しい。せっかく覚えた技術が数年で使われなくなったらどうしよう」
と不安に思うかもしれません。

確かに技術は次々に入れ替わります。
しかし、その裏側にある根底の原理原則は、驚くほど変わりません。

Excelを例に考えてみましょう。
Excelには数百種類もの関数がありますが、多くの上級者はそれらを丸暗記しているわけではありません。
彼らが理解しているのは、関数個別の名前ではなく、
  • 引数(入力を受け取る)
  • 処理を行う
  • 戻り値(結果を返す)
という共通の基本構造です。
さらに、
  • 相対参照と絶対参照($A$1)の仕組み
  • データの関連付け
といった根本原理を掴んでいます。
だから、新しい関数が登場しても、短時間で深く理解し、自分の武器にできるのです。

システム開発も全く同じです。
時代によって言語やツールは変わります。
しかし、
  • データ構造とアルゴリズム(データをどう持ち、どう処理するか)
  • 構造化の原則(役割をどう分割し、どう連携させるか)
  • 通信の仕組み(ネットワークを超えてどうデータを届けるか)
といった本質は、何十年も前から形を変えて繰り返されている超・基本原則です。
表面的なマニュアルの使い方だけを追いかける人は、変化に振り回されて疲弊します。
そうではなく、
  • なぜこの技術が生まれたのか
  • 根底にある思想は何か
という本質を面白がれる人だけが、時代を超えて新しい技術を次々と自分の武器に変え、変化を乗りこなし続けることができるのです。


最後に:技術の前に、マインドを磨け

Excelは、単なる事務用の表計算ソフトではありません。

情報整理、設計、業務改善、自動化

ITに必要な考え方を凝縮して学べる、最高の教材です。
VBAも、Pythonも、最先端のAIも、その先にある「道具」に過ぎません。
本当に大切なのは、
  • 情報を整理すること(構造化)
  • 課題を解決すること(目的志向)
  • シンプルに設計すること(単純化)
  • 本質を理解すること(原理原則)
です。

この4つを身につければ、使う技術が変わっても困ることはありません。
ExcelはITの縮図です。
Excelを深く学んだ人は、やがてVBAへ進み、システム開発へ進み、AIの時代になっても通用する本質へ辿り着きます。
だからこそ、Excelを「ただの事務ソフト」と侮ってはいけないのです。
技術は変わります。しかし、本質は変わりません。




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