第16回.Pythonの引数は参照渡しだが・・・
関数やメソッドの引数に渡す方法としては、「参照渡し」と「値渡し」があります。
Pythonはすべて参照渡しであり、値渡しを指定する書き方は用意されていません。
では、Pythonの参照渡しとはどういうものか・・・
今回は関数の最後として 、
引数や戻り値はどのように渡されるかについて、実際のスクリプで確認していきます。
目次
参照渡しと値渡し
「値渡し」とは、変数に入っている値をコピーして渡します。
しかし、オブジェクトはそもそも変数に値が入っているわけではありません。
変数には、オブジェクトのid(識別値、アドレス)が入っています。
参照渡しで渡すものはこのidを渡しています。
つまり、引数へ渡すのはオブジェクトのidという事になります。
その結果してどのような挙動になるかを具体的なスクリプトで見ていきます。
これまでの復習:前提知識
変数の識別値(アドレス)を取得するid()関数
識別値は、id()関数で取得できます。
識別値は整数で、そのオブジェクトの有効期間中は一意かつ定数であることが保証されています。
有効期間が重ならない(同時に存在しない)2 つのオブジェクトは同じ id()値を持つ事はありえます。
別の変数への代入
別の変数 = 変数
変数 = "値"
print(id(変数))
別の変数 = 変数
print(id(別の変数))
ただし、そもそも値を変更できるのはミュータブルの変数に限ります。
v1 = [1,2,3]
v2 = v1
print(f"{id(v1)=}")
print(v1)
print(f"{id(v2)=}")
print(v2)
print("v1[1] = 99")
v1[1] = 99
print(f"{id(v1)=}")
print(f"{id(v2)=}")
print(v2)
変数 = 別の値
変数 = "値"
print(id(変数))
変数 = "別の値"
print(id(変数))
代入する値が元の値と同じ場合は、元の変数は破棄されずそのまま残ります。
変数 = 同じ値
変数 = "値"
print(id(変数))
変数 = "値"
print(id(変数))
この挙動は保証されているものではないと思います。
※対話モードでは別idになります。
ミュータブルとイミュータブル
ミュータブルは、オブジェクトの値そのものを変更できるオブジェクトです。
イミュータブルは、オブジェクトの値そのものは変更できないオブジェクトです。
イミュータブルのオブジェクト:bool,int,float,complex,str,tuple,range
Pythonはすべて参照渡しなのですが・・・
・引数は参照渡しです。
・戻り値も参照渡しです。
・数値や文字列を含めすべての値はオブジェクトです。
・データ型にはミュータブルとイミュータブルがあります。
これらが相まって少し理解しづらくなっている気がします。
しかし、イミュータブルはそもそも値を変更できません。
そして、変数に再代入した場合は新たに別の変数として作成されます。
結論としては、仮引数を変更して実引数に変更を反映させる記述は避けたほうが良いと思います。
ただし、その場合の挙動についてはしっかり理解しておくべきでしょう。
Pythonの引数は参照渡し
def fn(arg):
print(f"関数受取id={id(arg)}")
v = "abc"
print(f"定義当初id={id(v)}")
rtn = fn(v)
Pythonは戻り値も参照渡し
def fn(arg):
print(f"関数受取id={id(arg)}")
return arg
v = "abc"
print(f"定義当初id={id(v)}")
rtn = fn(v)
print(f"関数戻りid={id(rtn)}")
変数への再代入は別id
def fn(arg):
print(f"関数受取id={id(arg)}")
arg = [1,9,3] #これにより別idになる
print(f"関数書換id={id(arg)}")
print(arg)
v = [1,2,3]
print(f"定義当初id={id(v)}")
print(v)
fn(v)
print(f"関数の後id={id(v)}")
print(v) #関数内での仮引数への変更は反映されない
変数への再代入でもミュータブルの同値は同じid
def fn(arg):
print(f"関数受取id={id(arg)}")
arg = (1,2,3)
print(f"関数書換id={id(arg)}")
v = (1,2,3)
print(f"定義当初id={id(v)}")
fn(v)
print(f"関数の後id={id(v)}")
この挙動は保証されているものではないと思います。
ミュータブルの要素変更
def fn(arg):
print(f"関数受取id={id(arg)}")
print(arg)
arg[1] = 9
print(arg)
arg.append(4)
print(arg)
del arg[0]
print(arg)
print(f"関数書換id={id(arg)}")
v = [1,2,3]
print(f"定義当初id={id(v)}")
print(v)
fn(v)
print(v)
print(f"関数の後id={id(v)}")
複合オブジェクトの要素変更
def fn1(arg1):
def fn2(arg2):
print(f"fn2 受取id={id(arg2)}")
arg2[1][0] = 99
print(f"fn2 書換id={id(arg2)}")
print(f"fn1 受取id={id(arg1)}")
fn2(arg1)
print(f"fn2 の後id={id(arg1)}")
v = (1,[11],3)
print(v)
print(f"定義当初id={id(v)}")
fn1(v)
print(f"関数の後id={id(v)}")
print(v)
可変長の変数も参照渡し
def fn1(a1, a2, a3):
print(f"関数受取a1={id(a1)}")
print(f"関数受取a2={id(a2)}")
print(f"関数受取a3={id(a3)}")
a3[0] = 99
v1 = 123
v2 = (1,2,3)
v3 = [1,2,3]
print(f"定義当初v1={id(v1)}")
print(f"定義当初v2={id(v2)}")
print(f"定義当初v3={id(v3)}")
fn1(v1, v2, v3)
print(f"関数の後v1={id(v1)}")
print(f"関数の後v2={id(v2)}")
print(f"関数の後v3={id(v3)}")
print(v3) #listは値が変更される
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