VBA技術解説
条件付きコンパイル(32ビット64ビットの互換性)

ExcelマクロVBAの問題点と解決策、VBAの技術的解説
最終更新日:2016-08-13

条件付きコンパイル(32ビット64ビットの互換性)

条件付きコンパイルは、
VBAの特定のコードブロックを選択してコンパイルします、VBAの他の部分は無視されます、
条件付きコンパイルステートメントは、実行時ではなくコンパイル時に実行されます。


条件に基づいてコンパイルするコードのブロックを指定するには
#If...Then...#Else ディレクティブを使用します。
(ディレクティブという言い方をするだけで、特段気にする必要はありません)

#If...Then...#Else ディレクティブは、プロシージャの内外で使用できます。
Decrareステートメント
モジュール定数・変数の宣言
プロシージャ内のステートメント
これら全てに有効なものです。
したがって、32ビットと64 ビットで、処理ロジックを変えることも可能です。

用途としては、
デバッグ時と本番を切り替えたりにも使いますが、
一番よく使われるのは、
Excel32ビットとExcel64 ビットの互換性を保つ為に、共通のVBAソースコードにする場合です。
具体的には、Win32APIを使用しているとき、
Excel32ビットとExcel64 ビットでは、Declareステートメントを変えなければなりません。
※Excel32ビット
 Excel2007以前の32ビットになります。
 Excel2010以降では、32ビットのExcelでも、も64 ビットの記述で問題ありません。

本ページの内容は、以下のMSDNをもとにしています。
Office 2010 の 32 ビット バージョンと 64 ビット バージョンとの互換性
64 ビット Visual Basic for Applications の概要
コンパイラ定数


アクティブウィンドウのウィンドウハンドルを取得するAPIを使用する時の、Decrareステートメントです。

32ビットでは、
Declare Function GetActiveWindow Lib "user32" () As Long

この記述では、64ビットでは実行時エラーとなります。


64ビットでは、


Declare PtrSafe Function GetActiveWindow Lib "user32" () As LongPtr

この記述では、32ビットでは、コンパイルエラーとなります。

VBA7では、
APIのDeclare ステートメントを更新して、64 ビット バージョンで動作するようにしなければなりません。
これらのステートメントで使われているアドレス ポインターおよび表示ウィンドウ ハンドルを更新することも必要です。
64ビットでは、以下の機能が追加されています。

LongPtr
変数型エイリアスLongPtr が追加されています。
LongPtr が解決される実際のデータ型は、実行しているOfficeのバージョンによって決まります。
32 ビット版ではLongPtはLongに解決され、64 ビットではLongPtrはLongLongに解決されます。
LongPtrはポインターおよびハンドラーに使用します。

LongLong
LongLong データ型は符号付きの 64 ビット整数であり、64 ビットでのみ使用できます。

PtrSafe
PtrSafe キーワードは、Declare ステートメントが 64 ビット版の Office で実行しても安全であることを示します。

64 ビット版のOfficeで実行するときは、
すべてのDeclareステートメントにPtrSafeキーワードが含まれている必要があります。
PtrSafeをDeclareステートメントに追加しただけではDeclareステートメントが64 ビットを対象にしていることを示しているだけです。
64 ビットを格納する必要があるステートメント内のすべてのデータ型を、64 ビットの大きさを保持するように変更する必要がります。


このDecrareステートメントを、
32ビット、64 ビットのどちらでも、実行可能なVBAコードにするには、
条件付きコンパイルを使用して、



#If Vba7 Then
Declare PtrSafe Function GetActiveWindow Lib "user32" () As LongPtr
#Else
Declare Function GetActiveWindow Lib "user32" () As Long
#End If


このように、
#If...Then...#Elseディレクティブ
を使用します。


ただし、32ビットでは、コンパイルエラーとして赤字になってしまいます。
VBA 参考画像

しかし、問題なく正しく実行できます。
64ビットでは、コンパイルエラーの赤字にはなりません。

64ビットでは、
Declare PtrSafe Function GetActiveWindow Lib "user32" () As LongPtr
がコンパイルされ、
32ビットでは、
Declare Function GetActiveWindow Lib "user32" () As Long
がコンパイルされます。

#If Vba7 Then
の部分を、
#If VBA7 And Win64 Then
としてサンプルが書かれているものをよく見かけますが、64ビット版のOfficeでは、VBAのバージョンが7を使用しているということで、
Vba7、Win64のどちらで判断しても、今回の場合は同じことになります。
Vba7条件付きコンパイラ定数は、
コードがバージョン7のVBエディター(Office2010以降に付属するVBAのバージョン)で実行するかどうかを判別するために使用されます。
Win64条件付きコンパイル定数は、
実行しているOfficeの版 (32ビットまたは64ビット) を特定するために使用されます。

このような、Vba7Win64は、コンパイラ定数と言います。
使用できるコンパイラ定数は以下になります。
定数 説明
Vba6 開発環境が、Visual Basic for Applications Version 6.0 互換の場合に True、以外は False
Vba7 開発環境が、Visual Basic for Applications Version 7.0 互換の場合に True、以外は False
Win16 開発環境が、16 ビット互換の場合に True、以外は False
Win32 開発環境が、32 ビット互換の場合に True、以外は False
Win64 開発環境が、64 ビット互換の場合に True、以外は False
Mac 開発環境が、Macintoshである場合に True、以外は False



使い方は、これだけです。
とくに難しいこともありません。
ただ、個人的には、
32ビットで、Decrareが赤字のコンパイルエラーになってしまうのは、どうも気色が悪いですね。
ただ、Excelのバージョンも2010以降が主力になりつつあるので、
このような問題も、今後は無くなってくると思います。



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