エクセル雑感
「ネ申Excel」問題 への同意と反論

ExcelマクロVBAとエクセル関数についての私的雑感
公開日:2016-10-23 最終更新日:2016-10-24

「ネ申Excel」問題 への同意と反論

「ネ申Excel」、私は流行に疎いので、ネ申の意味が最初分からなかった、
どうやら、「神Excel」のことのようです、
大学教授が書いた、Excelの問題点と解決策の提案がかかれた論文です、
この論文に対する、私なりの同意と反論です。


Excelを論ずるのに、なぜネ申などという言葉を使ったのか、私には少々理解しがたい部分もありますが、
※ネ申について
論文には、以下のように書かれている。
本稿ではすでにネットで一部に浸透している「ネ申Excel」 [という呼び方を使うことにする。
ここで「ネ申」は「神」の隠語であるが,「紙(への出力しか考えていない)Excel」の意味も含んでいる。

「一部に浸透している」という事は、広くは浸透していないという事で、あえてタイトルに使う必要があったのか疑問は残ります。
勝手に想像するなら、ネットで方眼紙Excelが叩かれているのを見ていて、ネットをかなり意識した結果ではないかと思う。
ネットを意識することは決して悪い事ではないし、むしろ当たり前ではあるが、
だからといって、ネットスラングを使う事の良し悪しは別であると思います。


肝心の内容についてだが、
ここに書かれていることは、Excelを良く知るものなら、ほぼ同意する内容となっています。
むしろ当たり前すぎて、私からすれば大学教授がわざわざ書くことなのかとさえ思ってしまう。
このようなExcelの使い方に対する批判は、それこそネットにあふれているからだです。
しかし、ネット住民の単なるぼやきとは違い、
大学教授と言う立場だからこそ影響を与えることの出来る範囲というものもある。
特に、常に批判にさらされている官公庁においては、熟読してもらいたいと思う。


「ネ申Excel」原文
奥村晴彦 (2013年7月12日)
「ネ申Excel」問題 (PDF)

ぜひ原文を読んでもらいたいが、ごく簡単に部分的に抜粋しておきました。
原文のままではなく、代表する一文を抜粋要約しています。

Excel に代表される表計算ソフトは,簡便なデータ入力・解析・可視化ツールであるが,これを柔軟な罫線
の引ける DTP ソフトとして用い,データとしての再利用の困難な複雑な帳票を作成してしまうことがよくあ
る。この類の「ネ申 Excel」(神 Excel)が引き起こす問題点をまとめ,解決策を提案する。

1 はじめに
2011 年の東日本大震災後の際、公開されたデータの機械可読性の低さ。
Excelに入力されていながら、集約や再解析にたいへん手間がかかった。

2 罫線ツールとしての Excel
Excel方眼紙と揶揄される。

3 情報集約に使われる Excel
多くは回収した時点で紙に印刷して人力で集計しているようである。

4 数値を文字列として入力したもの
その値は数値としてではなく単位つきの文字列として Excel に入力されたものであった。
そのため、数値として解釈できないものを入力してもフィードバックが得られない。

5 セル結合
日時は,日と時が入れ子関係にあるので、日をセル結合することがよくあった。
これも機械処理には向かない。

6 どうすればよいか
表計算ソフトで機械可読なデータを作成するには、
セル結合・罫線・文字飾りなどの視覚的効果にデータとしての意味を持たせず、
一定の方式(通常は 1 行目に項目名,2 行目以降にデータ)で入力する。
数値データは(単位を付けず)数値として、
日時データは日時として解釈できる文字列として入力する。
保存は,CSV などの軽いファイル形式にするのが望ましい。
ソフトウェアの側にも工夫の余地がある。
文書の内容と見せ方を分離する HTML + CSS や LATEX と同様に、
データとその見せ方を分離するという発想のソフトが期待される。


参考までに、Excel方眼紙にについて書かれた記事を紹介しておきます。


「Excel方眼紙」の何が悪い?
田村規雄 (2014年3月26日)
「Excel方眼紙」の何が悪い?

「バッドノウハウ」との批判
「作る側」と「使う側」の対立
10年前とは「再利用」の幅が違う
システム側からの歩み寄り
開発者も想定しないExcelの使い方
開発者の豊かな創造性に期待


「ネ申Excel」で書かれていることは、前述のとおり、ほぼ同意出来る内容となっています。
そこで、同意の理由をわざわざ書く必要もないので、以下では、反論を主体に書き進めます。
まずは、簡単に「いちゃもん」から


「いちゃもん」をつけてみた
1 はじめに
自身の作業において、
「集約や再解析にたいへん手間がかかった」
だから、皆さんちゃんと作ってちゃんと入力してよ、ということのようだ。
えーと、あなたの為に、何で協力しなくちゃいけないの…
という声が聞こえてきてもおかしくない。

2 罫線ツールとしての Excel
罫線は付けるでしょ、日本人はそれが見やすいと感じる人が多いと思っているからです。
外国では、横罫線のみで作ることが多く、縦罫線はあまり使わない。
こんな話を聞きますが、それは、そもそも横書文化だからであって、
縦書き文化が残る日本の事情とは違うものです。
1枚の文書の中に、縦書き横書きが混在することは良くあることで、
それをしっかりと区分けするには、罫線が必要なのです。

生 年 月 日
年 号 の 年
月 日 の 月
日 付 の 日
さあ、読めと言われて、すっと読めますか。
ほんの一瞬でも、日本人なら戸惑うものです。
この一瞬の戸惑いさえ与えないように罫線を引くのです。
これは、日本人の気遣いというものです。
お・も・て・な・し

3 情報集約に使われる Excel
情報集約にExcelが使われるのは当たり前のことで、
この例では、単に使い方が悪いというだけの事。
それでも手書きよりはましではないだろうか。
「図形」についてのみ、やけに詳しく手順まで説明している事が不思議に感じた。
恐らく、自身がそのようなことを度々しているのだろう事は容易に想像がつく。

4 数値を文字列として入力したもの
無理矢理悪いサンプルを引っ張り出してきているわけだが、
304.6 μSV/h
3お5.6 μSV/h
これは、単なる入力ミスであり、だいぶ主旨からずれている印象。
ここでは、むしろ入力規則のような機能を使う事に言及して欲しかった。

5 セル結合
「機械処理には向かない」と書いているが、
そもそも機械処理を意識してつくっていないのだから当然の事。
そんなことより、「機械処理」って何だ、OCRで読ませるのだろうか。
コピペしての処理の事か、コピペは機械処理なのか。
それはともかくとして、
「機械処理には向かない」しか書かれておらず、セル結合の何がいけないのかが具体的に書かれていない。
単に、著者が扱いづらいから、としか読み取れなかった。
少なくとも、サンプルの表くらいなら、さほどの問題はないでしょう。

6 どうすればよいか
高校「情報」や大学の一般情報教育については、著者のお仕事なので頑張って。
データとその見せ方を分離については、IT系の人なら当たり前なので、
ITに疎い人に教えるべきことで、これも著者のお仕事の一部なのでは。
結局、どうすればよいか、と言うより、こうしてね、とお願いが書かれているだけのように感じる。

とまあ、「いちゃもん」つけるならいくらでもありますが、書かれていることは、至極もっともな事です。
ただ、著者自身は、あまりExcelに詳しいとは思えないのは、少々残念に感じました。
より具体的な解決方法を示さなければ、単なる愚痴としか読めないのは残念。
Excelの機能をしっかり使えば、何もわざわざ、
HTML + CSS
LATEX
Apple Numbers
の話など出してくる必要はないはずです。
単に、Excelの使い方を覚えれば解決する問題です。
「データとその見せ方を分離」
本来は、3層で語られるべき事、
プレゼンテーション層
アプリケーション層
データ層
Excelでも、これを念頭においてシートを設計すれば良いのです。
データを入れてDBとして扱うシート
集計・編集用のシート
印刷用に整形するシート
もちろん、複雑なレポートでなければ、2層で済ませて良い。

Excelは汎用ツールなのだから、どのように使うかは使い手の工夫の問題です。
少なくとも、「データとその見せ方を分離するという発想のソフト」
という事とは無関係であり、次元の違う話ではないだろうか。

最後に、
文中に使われている句読点について述べておきます。
句読点の、ではなく、全角カンマの,が使われています。
公文書や学校関係では、以前に通達が出ているらしく、,を使う事に統一されているようです。
しかし、この論文でも度々言われている、
生産性を落とす
というのなら、,を使用することは、いかがなものなのだろうか。
どう考えても、入力しづらいはずです。
,の使用は生産性を落としていないのか、しっかりと足元を見るべきだろうと思う。


Excelの使い方に対する批判に対する批判

ワープロがわりに使うことの何が悪いのか分からない。
Excelはもちろん、PCも単なる道具でしかないはず。

道具の正しい使い方とは何か
それは誰が決めたのか

石の使い方として、
投げることは正しい石の使い方なのか
割って角を鋭利にして、刃物として使う事は正しい使い方なのか

道具の使い方として、危険な使い方はしないように啓蒙する必要はある。
石で人を殴ってはいけない
これは当たり前の事であり、皆が守るべき事です。

Excelの使い方として、そのような危険があるなら、それを注意喚起することは必用です。
しかし、ワープロ代わりに使う事が危険な使い方だとは私は思わない。

道具とは、道具を作り出した人が予想もしなし使い方をすることで、より進歩していくこともある。
そもそも、文明とは、そのようなにして進歩してきたのではないのでしょうか。

獲物をしとめる時、槍を使おうが、石を使おうが、それは勝手というもの。
槍の方が効率的だからと限定する意味がどこにあるのか。
獲物が突然目の前に出てきたとき、槍を持っていなければ、取りに帰るのか、
その場にある石で仕留める努力をするのか。
極論ではあるが、そういう事ではないかと思う。
また、人によっては、槍は上手く投げられない、石なら確実に当てられる。
そういう人も少なからずいる、何が何でも槍である必要はないはず。


ではどうすればよいか

現代において、石を使って何かをする機会はほとんどないでしょう。
(もちろん全くないわけではなく、昔に比べて少ないという事)
それは、道具が進歩して、皆に行き渡っているからです。
道具を進歩させるのは人間です。

「ネ申Excel」問題も同じことだと思っています。
Excelのみならず、IT全般が進歩すれば、おのずと解決されてくるもの。
方眼紙Excelでも、
ボタン一つで書かれている内容をデータベースに蓄積できるようになれば、何も問題は無いのです。
そして、それくらいの事は、現代においてさほど難しい事ではなく、
需要があり、商売として成立するなら、すぐにでも開発されるものです。
(どんなレイアウトでも確実にデータベース化できるかどうかは別、最低限の規格は必用)
昨今のAI技術も含めて考えれば、かなりのものは出来るはず。
多少の制限事項を付けて良いのなら、VBAで書くことも難しくはない。
私は知らないが、実際にそのようなソフトも既に存在しているかもしれない。

問題は、「Excel方眼紙」の何が悪い?
ここで述べられているように、「作る側」と「使う側」の対立
これこそが問題の本質にあるのだという事です。
Excel方眼紙を作る人は、その中のデータを二次使用することなど毛頭考えていない。
そして、それを考えないことが、必ずしも悪とは言えないという事です。
その人にとって、Excel方眼紙で目的を達成しているのなら、他人がとやかく言う事ではないからです。
そう考えれば、Excel方眼紙の作り手に説明しても理解してもらう事は難しいでしょう。
むしろ、それを二次使用する側ににこそ、しっかりとした意識を持ってもらう事が必要なのです。
二次使用する側から、Excel方眼紙の作り手に対して、
これこれこういう理由で、Excel方眼紙は止めて下さい。
と言うべき事です。

話はそれるが、
天然のカキを取ったことがあるだろうか。
岩から剥がすのはかなり大変です。
専用の道具が無ければ、なかなか剥がせるものではない。
道具が無い時どうするか、石で割って中身を取り出すだけなら簡単です。
持って帰って、家人に調理を頼んだとき、殻付きで取ってきてと・・・
つまり、道具は必須なのです。
そして、道具があれば全ての問題が解決してしまう。

Excel方眼紙を作る人に、それに代わる道具の提供こそが問題解決なのです。
その道具を持たない人に対して、何かを言う事では何も解決しません。

私は仕事柄、データ整形をすることは多々あります。
このレイアウトでは・・・と思いつつ作業することも多いです。
しかし、それが継続的に発生するなら、
作り手に対して、しっかり説明しデータ作成方法から指導することになります。
場合によっては、データ作成用のツールの提供をすることに必要になります。


最後のまとめになります。


Excel方眼紙を使わなくても良い道具の開発
Excel方眼紙すらデータ化出来るツールの開発

たったこれだけの事です。
そんなに難しい事ではない、少なくとも技術的にはほとんど問題は無いでしょう
しかし、これらの登場までには、今しばらく時間がかかりそうです。
それまでは、Excelで帳票を作るとき、その後にそれを利用する人のことを考えて、
ほんの少しでも、気づかいして作ってください。
それには、ほんの少しExcelの機能を学んでもらう事も必要になります。


番外編

ここまでは、Excelの一般論として話をしてきましたが、
この論文の本質は少し違うのではないかと思っています。
大学教授が公文書のデータを扱う事が多く、その時の問題点について役人に文句を言っている。
のではないかと見た方が良いのではないかと思うのです。
そのように見てしまうと、全て納得がいきます。
内容も文書自体も、この論文自体が公文書なのでしょう。。

民間の一般的な組織(会社)であれば、
この帳票は、その後にデータ集計するから、セル結合とかはせずに、すっきり作る。
この帳票は、印刷して配布するだけだから、見た目重視で作る。
これを部外者がとやかく言う事ではないし、そんなことは言えないものです。

大学教授が公文書にたいする意見とみれば、その通りである。
そして、そもそも役所は文書の二次使用など考えている訳も無いのだから、
それを使用する時に問題が多々出てくることは、いわば当然の事でしょう。
ましてや、論文で指摘されている生産性を重要視しているとは到底思えないのです。
意図しているかどうかは別にして、役所が時として上目線の対応なのは誰もが感じていることではないでしょうか。
本当は、Excelの事などどうでもよく、
そのような役所の対応を改善したいという事こそが、この問題の本質なのだろう。
これが、私のこの論文に対する真の考察になります。




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